山内みらい行政書士事務所
国際相続・遺言
財産がどこにいくらあるのか分からない

財産がどこにいくらあるのか分からない

遺産(財産)をどうやって探すかのコラムです。我々相続のプロはこういうことを考えながら、ご依頼人と故人の過去のことをお聞きしてヒントを得て、探していきます。下記の通り、極めて地道な作業です。全て書面が必要で、大変に手間がかかります。

金融機関で口座の有無と残高を照会する

日本の銀行や信用金庫などの金融機関に口座の有無や残高を一網打尽に照会・検索するシステムは、残念ながらありません。

銀行はみな情報交換をして繋がっているという思い込みがある人がいますが、個人情報保護が最優先される時代にそんなことは全くもってありえない、と思って下さい。各銀行が競争のため開示しない、という理由ではありません。

この照会の段階で故人が亡くなったことを銀行に知らせますので、戸籍謄本等がなかったとしても、銀行は口座を即座に凍結します。つまり、一切の口座の出し入れが出来なくなります。銀行は知った以上は凍結する旨の約款になっていますので、彼らは正しいことをしています。

まずは遺品です。 通帳、キャッシュカードはありませんか。 クレジットカードも銀行提携のものがあります。スイカやパスモなど交通系カードもクレジットカード提携のものも多くありますのであなどれません。 銀行から郵便物が来ることはほぼないので、手がかりはこれらからスタートでしょう。 また、貸金庫を借りている場合は真っ先に開扉して内容を見るべきです。なお、貸金庫を借りている銀行に死亡の事実を伝えると、口座が凍結される結果として貸金庫も開扉できなくなることが多いです。「にわとりたまご」になるリスクがあります。

なお、預金があるかないかについての照会を一網打尽にすることはできないと申し上げましたが、銀行からの借り入れ等の内容や支払状況などを確認できる仕組みはあります。全国銀行協会が有している信用情報照会制度です。 費用も時間もかかりますが、これを照会すると、銀行からの借り入れが分かります。とするとそれに応じた口座があるはずだ、という推測は成り立ちます。

但し、借り入れをしている場合には、返済のための預金が必ずあるはずですから、故人の遺品に何か手がかりが残されていることが普通です。

さて、特に故人が会社員だった場合には、通帳がない口座が実は存在した、ということがあります。

1990年前半までの高金利時代、銀行は預金獲得競争に走っていました。このため会社員には仕事上付き合いのある銀行から口座を作ってくれという要請があり、気乗りはしなかったかもしれませんが、いわゆる「付き合いで」口座を作ることが多くありました。超低金利(マイナス金利)やマネーロンダリングが問題となっている現在とはほぼ真逆の世界で、銀行の支店がそれこそ軒並み統廃合されるのを目の当たりにしている今の若い人にはとても考えづらいでしょう。高金利をうたい文句にした定期預金も盛んに勧誘された時代です。

銀行は合併・名称変更を繰り返しており、今の名称と昔の名称が全く違うことが多くあります。

例えば三井住友銀行は三井銀行と住友銀行が合併したことは誰でもお分かりになるでしょうが、実はこのときの三井銀行(旧さくら銀行)は太陽神戸銀行と三井銀行が合併したものです。この合併は1990年で、故人の年齢を考えた時にはそれほど大昔ではありません。太陽神戸銀行は元は文字通り太陽銀行と神戸銀行で、神戸銀行自体が7銀行が合併されて出来た銀行です。神戸銀行に口座を持っていたのであれば、今は三井住友銀行に口座が残っているのでは、ということです(残高の大小は別にして)。

地銀や信金も昨今金融庁の方針を受けて、合併・経営統合が進み、名称変更も相次いでいます。

このため、少なくとも3メガ銀行、ゆうちょ銀行、そしてゆかりのある土地の大手地方銀行ぐらいは、面倒でも、おのおの照会をかけるべきだと弊職は考えています。この機会を逃すとほぼ永遠に個人の財産は見つからないと言って過言ではないからです。

但し、あまり手間をかけすぎるのは財産移転まで時間と手間ばかりかかることから、見切る・区切る判断も大事で、ここはバランス問題と言えます。

証券会社については、通常株主総会の案内や残高証明が送られてくることから、口座がある可能性のある会社は限られるでしょう。

なお、証券振替保管機構により、証券会社の口座有無を確認することが出来ます。有料で時間もかかりますが、念のため確認したい場合は利用が可能です。

故人の他界に伴い支払われるのが生命保険です。事故の場合は傷害保険部分も生命保険部分に上乗せして支払われることが多くありますし、通常の病気の場合は生命保険部分のみが支払われます。

年齢が高齢になると保障がなくなっているはずだ、とまず思われるでしょうが、特に今の高齢者が加入することが多かった1980年代から90年代にかけて生命保険会社の主力商品は薄い終身保険+厚い定期保険でした。これを文字通りパターンで大量に販売していました。

定期保険部分の満期の多くは60歳か65歳でしたので、この定期保険部分の厚い保険金は支払われなくとも、終身保険部分は、文字通り保障は終身であって、死亡したら、免責事由に該当しない限り、確実に支払われます。

保障は終身である一方、保険料の支払いについては、通常60歳前後で設定されています。

このため、通帳から保険料の引き落としがなくとも、保障だけ残っている可能性があるのです。

まず、古い保険証券は残っていませんか。残っていると細かな字で何が書いてあるかとても読みづらいことと思います。

なくとも、世の中の相続ニーズの高まりに伴い、生命保険協会が、生命保険契約照会制度という、生命保険各社に契約の有無を照会してくれる制度が出来ました。有料で時間はかかりますが、照会する価値はあるように思われます。

なお、相続財産には、死亡保険金は含まれません。既に保険金受取人が指定されているケースが大半であり、その方に保険金が帰属することが確定しているものなので、別扱いです。このため、遺産分割協議の対象にはなりません。

一方、亡くなる直前の入院や手術による保険金は、生前の本人に支払われるものであるため、原則として遺産に含まれます。

ここでは詳しく触れませんが、相続税の計算においては、死亡保険金は含まれることになります。但し、一定の非課税枠があります。

不動産の登記を確認する

多くの方に不動産の権利があります。100%の所有権でなくとも以前の親の相続による一部共有持分や、土地はないが建物だけとか、事実上縁がない山林や畑などもあります。

遺言があれば、通常は不動産に触れられています。

遺言の文言では不動産が特定できないこともあり、相続の時に登記に非常に大変になることがあります(「長野の土地を長男に譲る」だけの記載・・など)。公正証書では作成時に公証人と必ず不動産を特定した上で遺言を作成するので、こういったことはないでしょう。

まず権利証や不動産売買契約書がないかを遺品から探します。その上で現在これらの登記がどうなっているかを調査します。

古い契約書が残っていても、実はその後売却したということもあります。遺言を書いた後に売却した例もあります。高齢で介護施設に入るため、資金を捻出するなどの背景があるためです。

不動産登記簿は公開されており、誰でも写しの請求ができます。法務局に請求します。

なお司法書士や我々相続のプロの行政書士などは、法務局のインターネットシステムのアクセスの仕組みを利用して、不動産の地番を特定できれば、瞬時に登記簿の内容と同じ情報を得られることが出来ます。

相続する不動産について、一度も見たことがない、全然土地勘がない、といった場合は、相続される方ご本人には、相続の前後を問いませんので、是非一度現地に見に行かれることを強くお勧めします。 土地・建物は、家選びをされたことがある方はよくお分かりと思いますが、図面や地図・住宅マップ、Googleマップの映像だけでは絶対に分からないことが多くあります。近隣との境界、周囲の雰囲気、駅からのアクセス、アプローチの道路の状況、雪による状況の変化、建物の経年変化の度合い(空き家は傷みが早く進みます)などなど、こればかりは様々です。現地に行くと地元の不動産屋さんと情報交換をついでにするということも出来ます。

なお、不動産で注意しなければならないものに、「公衆用道路」というものがあります。住宅地で区画まるごと分譲のようなケースで見られることがあります。

地目は公衆用道路となっており、道路として使用されているが、土地の権利者があるケースです。共有になっていることが多いです。

法務局から土地の「公図」というものをとり、周囲にこういった道路のような区画がないか見てみます。大体近くにありますが、住宅地に半分囲まれているように見える道があると、登記簿をチェックします。自治体が所有者となっている公道となっていれば問題はありませんが、権利を有している場合には、持ち分が小さかった場合でも、権利は権利ですので、この機会に相続財産として認識し、相続登記をしないといけません。この機会を逃すと将来見つかったときに大変な苦労をさせられます。

不動産というと価値がある、将来上がる、といった「土地信仰」を持っている方がいらっしゃいますが、現実は必ずしもそうではありません。事実上売れない、すなわち買い手がつかない土地・建物も多くあります。一方で住宅地は価格次第で売却はある程度できるでしょう。完全に、不動産次第です。森林などは非常に処分に困る例が多いです。