山内みらい行政書士事務所
国際相続・遺言
遺留分を侵害するとはどういうことか、何が起きるのか、どうするべきか

遺留分を侵害するとはどういうことか、何が起きるのか、どうするべきか

遺言を作成する際の最大のポイントがこの遺留分です。

遺留分とは何でしょうか。

平たく言えば、

・遺言が遺されていて、その遺言で相続人に配分した内容が偏った内容であったとします。

・相続人は一定の人に一定の割合について、遺言の内容がそれを侵害する場合、その相続人は、その割合分(に相応する不足分)について、他の相続人に請求ができるというものです。

・これは金銭で請求できます。

ときどき相続の書籍で「遺言を遺すときには相続人に遺留分を遺さなければならない」という書き方を見かけますが、これは正確ではありません。遺留分を無視した遺言でも、それは実行されるからです。

ただし、遺留分を侵害された相続人は、他の相続人に、請求することができますよ、ということです。

「遺留分」については町中にあるどの相続の本にも必ず書かれています。

「全財産を長女に相続する」という遺言が出てきた時、長男と次女はどうするか。

本を読みます。もしくはインターネットで調べます。遺留分の存在を知ります。

権利があることを知ると、本人も、その家族も、穏やかではありません。他界前にこの話を了解していなければ、そもそも姉に全財産をという話を知った時点でまず感情的な問題が出始めています。

子供たちは円満にやってくれるだろうと遺す側は希望します。

ところが遺す側はもう他界されています。遺された彼らはさてどう行動するでしょうか。

請求したとして、問題は価格です。全額が現金であれば電卓でわかります。ただし不動産や他の資産が入ってきた場合、財産はそもそもいくらだったのかという点で意見が合いません。請求する側は不動産はいくらと考えるべきだと言い、請求される側はこの額じゃないのと低めに考えます。

この議論はまず一致しません。すでにこの時点で感情的な問題になっているからです。

結果的に、家庭裁判所の調停に持ち込まれる結果になりかねません。この時点で、子供たちの相互の信頼関係はかなり厳しいものになるでしょう。

請求された側は、法律上、払う義務が生じます。

請求されなければ、払う必要はありません。あくまで請求する側の権利です。

この権利は相続があったことを知ったときから1年、または故人の死亡から10年経った場合には、いずれであっても消滅します。

遺留分は誰にいくらなのか

相続人が誰になるのかで決まります。

相続人が親(直系尊属)の場合:親と配偶者合計3分の1が遺留分です。つまり3分の2は自由に遺言で処分できます。両親、配偶者ともに健在だった場合、配偶者に3分の1の半分、つまり6分の1。親はそれぞれ3分の1の半分の半分、つまり12分の1ずつが遺留分になります。要するに法定相続分の半分です。

 これより少ない割合だった場合、親、配偶者はそれぞれ遺言で受け取った他人(つまりは3分の2を受け取った人)に請求することができることになります。それぞれに足らない分が請求できます。

・それ以外のケースの場合、ただし兄弟姉妹は除く:半分が遺留分です。配偶者、子が1名という場合は、配偶者は半分の半分で4分の1。子も同じで4分の1。残りの半分は自由に処分できます。これも、遺留分は法定相続分の半分です。子がすでになくなっている場合は、その子つまり孫が遺留分を有します。

 兄弟姉妹には遺留分はありません。従って兄弟姉妹が法定相続人になる場合であっても、兄弟姉妹への配分はゼロとなる遺言では、事後請求云々の問題なく、実行されます。

ではどうしたらよいのか

そもそも遺言を遺す目的は何だったでしょう。

自分の意思を正確に反映することと、他界後の配分の手続きを早く、スムーズに行うことの2つです。

遺留分を侵害した遺言は、上記で述べたとおり、相続人間、過剰に遺贈を受けた人と相続人の間で、まずトラブルが発生するだろう、と言って過言ではありません。

何らかの理由で請求をせずに終わったとしても、感情的なわだかまりは残るでしょう。

このため、遺留分に配慮した遺言を遺すことを強くお勧めしています。

確かに遺言は法定相続と異なる配分をしたい場合にされることが多いのは事実です。しかし、他界後にもらう側がこれを原因でもめはじめたり感情的なわだかまりが残ることは、果たして遺す側の本意でしょうか。

遺す側の感覚と、受け取る側の感覚は相当に違います。

わずかな配慮で、こういったトラブルが避けられるのです。本意ではない財産配分はしたくない、最後ぐらい自由にさせてくれ、という気持ちももちろん理解しますが、ことは法律という決まりであり、かつ、金銭の問題です。

配慮しなかった場合におきる重大な結果の方を重視していただきたいと思っています。