相続が起きた後、以下のような事情で、相続人が誰だか、どこにいるのか分からない、ということがあります。
決して珍しいことではありません。
遺言がない場合には、相続人全員の合意による遺産分割協議が必要となり、これに例外はありませんから、相続人がどこの誰かを特定して、連絡をつける必要がどうしても出てきます。
・前の配偶者の間に子供がいることは知っているが、そもそも自分が結婚したときから全く音信不通である。住所も知らなければ名前も知らない。
・配偶者が亡くなり、子はいない。故人の両親も亡くなっている。故人の兄弟姉妹が相続人になることは分かったが、兄弟姉妹も高齢で一部亡くなっていることを知っている。その子つまり甥姪とは付き合いがほぼないので、名前はうっすら知っているが、さすがに住所までは知らない。
・年賀状だけちょっと前まで届いていたはずで、今回も連絡をつけようとしたが、住所が不明、さらにどこに転居したのかも不明。
・相続人が海外にいることは知っているが、全く連絡先は知らない。
どうやって探すのか。工夫と手間が必要になります。
戸籍を追っていくしか方法がありません。戸籍についてはこちらのページで述べましたが、戸籍の附票というものを取れば、現住所は一応分かる仕組みにはなっています。
但し、本籍地に請求が出来たとして、自治体の担当者からいろいろと質問をされることは確実です。個人情報の開示には当然極めて慎重だからです。
本来は遺産分割協議のため相続人を探すことは他の相続人に認められる権利ではありますが、この人の戸籍の附票が必要であることを立証しなければ開示はしないとおそらく言われることと思います。
むしろ、逆の立場であれば、役所には当然そう対応してほしい、と、感じませんか。
とすると、こちらのページで書かれたとおり、これまで集めた戸籍を事情説明書と共に提出することになると思われます。このあたりは自治体それぞれの判断になります。
なお、この附票を取って住民票上の住所地が判明したが、さらに連絡がつかない場合どうするか。ここまで来ると、これは専門家に確実に相談すべきです。ここまでで相当な時間を費やしていると思いますが、この後も長くなります。故人の他界後10ヶ月以内という相続税申告期限を意識せざるを得ない展開です。
遺産分割協議以前の事実の把握だけで、ここまで苦労させられることになります。
遺産分割協議は法定相続人全員の合意が必要になりますので、とにかく全員の所在をつきとめ、連絡が取れることが肝要です。