山内みらい行政書士事務所
国際相続・遺言
遺言と「遺書」の違い

遺言と「遺書」の違い

遺言と遺書の違いとは何でしょうか。

多くの方は「遺書」をまず想像されることでしょう。

自分の生い立ち、戦後の生活、嫁いだ背景、配偶者との結婚後の生活といった思い出や、長女にはこういったときの苦しいときのサポートに感謝している、長男には○○家の後を継いでもらいたい・・といったような、感謝や引き継ぎの主旨の言葉などが想像されますが、時には、長女の嫁は気に食わない、結婚には反対したのに、次男の進路はやはり誤った・・などといった、あまり遺族が聞きたくない言葉も、故人の最期の言葉ですから、含まれていることもままあります。

では、「遺言」とは何でしょうか。 ここでは、我々行政書士など法律・法務を扱う専門家の視点で述べたいと思います。

遺言とは、民法という法律に定められたものです。人が死亡した瞬間に相続が発生しますが、原則として、その故人の財産(「相続財産」)は、故人がどのようにするかを決めることが出来ます。(ここでは、遺留分等の効果の説明は省きます) 原則として、個人の財産は遺言通りに配分されることになります。これは民法に規定されていますから、言い換えれば、この配分を自分で決めることは、故人の当然の権利として認められているもの、と理解頂いて結構です。

ところがこの遺言には、民法が定めた様式があります。この様式に則ったものでなければ、「故人が配分先を決められる」効果を持った書面とは、認められないのです。

認められないとどうなるか。遺産は一旦法律に定める「相続人」による共有となり、具体的な配分、つまり誰がどのくらいの現金を得るのか、不動産の権利はだれになるのか、など全ては法定相続人全員の同意が必要となります。つまりは遺言が書かれていたとしても、法的に認められないため、遺言がなかったものと同じ扱いになります。

つまり、遺言書の趣旨をくんでくれて、相続人の人たちが配分してくれるかは、彼らの判断に委ねられます。こちらのページで述べましたが、このプロセスは極めて複雑で手間がかかりますし、果たして法定相続人が(不十分な)遺言通りに判断するかは分かりません。事は金銭の問題に集約されますから、紛争までには至らなくても、なにがしかのわだかまりを残すことも十分に考えられます。

是非、「遺書」ではない「遺言」を残して下さい。

そして、残された遺族の方の頭痛やトラブル、不要なわだかまりを、回避してあげてください。

おそらく多くの方は「うちの子供たちは皆が仲よしだから大丈夫」「自分の資産は少ないからもめることはない」と思っていらっしゃいます。

ところが、「あげる方の10万円」と、「もらう方の10万円」では、全然感覚が違います。

皆様がお子様の年齢だったときに、「10万円」のお金で苦労されませんでしたか。

相続人のお子様たちには、ご家族はいませんか。ご家族は、この遺産に、本当に意見はしてきませんか。

お子様のなかには、収入が不安定な方や、お金の使い方がちょっと違う方は、いませんか。

皆様はお子様たちを含めた「扇の要」になっていらっしゃいます。「要」がなくなった後、どうなるでしょうか。

なかなか難しいとは思いますが、ご家族の仲のよい関係を、皆様の後も保つのは、簡単ではありません。工夫が必要です。

なお、遺言はいつでも撤回ができます。一度遺言を書いたら変えられない、と思われている方が多いようですが、それは違います。

一方、撤回もきちんと様式に則らないと、「撤回が無効」になってしまいますのでご注意下さい。

また、遺言を書いた後も、記した預金を使ったり、不動産を処分したりすることは全く問題ありません。

こういった可能性も考えて、遺言の文面を考えていきます。